プラトン『饗宴-恋について-』を読む|パイドロスのエロス讃美をわかりやすく|ソクラテス真実の愛
ソクラテスの著書の中では有名な『饗宴』。「恋について」という副題に興味をそそられる人も多いはず。この記事では最初の演説者パイドロス、の主張をわかりやすく解説・批評します。
『饗宴』の設定を10秒でざっくり
※正しさを諦めて分かりやすさを重視した説明です。
1人目「パイドロス」はこんな人
- 「エロースべた褒め大会」の提案者
- スピーチ大好き少年
- ソクラテスの弟子で好奇心旺盛
プラトンは彼を主人公に『パイドロス』という著作も残しています。しかもその副題は『饗宴』と同じ「恋について」。ぜひとも『饗宴』の次に読みたい一冊です。
パイドロスの主張
(1)エロスは神々の中で最年長である!
エロースは偉大な神である。(中略)神々のうち最も古い者に属することは誉れであるからである。
パイドロスの最初の主張は年功序列、つまり「一番年上だから偉い!」です。
エロスが最年長である根拠は
①エロスに親がいると語る人が誰もいない。
②ヘシオドス著『神統記』に書かれている。
(2)エロスは死さえ恐れない勇気を与えてくれる!
相手のために死のうとまで決心するものはただ愛する者だけである
「愛する人の前で恥ずかしい思いをしたくない」「愛する人の前ではかっこいい自分でいたい」と感じるのは当然。
親や友人ならともかく、無様な格好なんて愛するあの人の前で絶対に見せたくない。ましてや愛する人がピンチなら、その人を見捨てて逃げ出すどころか、命に替えてでも守り抜くでしょう。
このような、愛する人を前にした時のプライドや勇気は、エロスが私たちに与えてくれている力なのだと、彼はいくつかの神話を根拠に述べました。
まとめ:パイドロスの主張は…
パイドロスの主張は、エロスを褒め称えるスピーチとしては、弱い。
量が少なく、内容も薄い。主張に納得はできますが、少し考えれば誰でも思いつきそうな讃美で、とても「美しい」とは言えないスピーチでした。
とはいえパイドロスはスピーチのトップバッター、考える時間もなかった中でいくつかの神話にもとづいてエロスの出生と能力を明らかにした彼の即興力は十分見事なものです。
また、メタな評価をすれば、スピーチの内容はだんだん美しくなっていかなければ、「物語として」盛り上がらないので、むしろ最初をこれで収めたパイドロスはかなり有能な人間説さえあり得ます。さすがスピーチ大会の提案者。
彼の主張を軸に、スピーチは次の話者へと移っていきます……(To be contenued)